西迫会計事務所
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第4次産業革命で、
「日本のお金」はどう変わるか。

マネーフォワード CEO 辻庸介 × 西迫会計 所長 西迫一郎

お金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」が800万ダウンロードを突破するなど、破竹の勢いで成長を続けるマネーフォワード。次代の金融業界を担うリーダーとして、辻庸介CEOは何を思うのか ─。
2019年 年明け早々の某日、辻社長を事務所へお招きし行われた講演会では、マネーフォワード社が掲げる「ミッション」「ビジョン」「バリュー」、そして、ITが生み出す会計の未来について語られた。講演後は、弊所代表・西迫一郎及び社員によるインタビューを実施。新進気鋭のベンチャー企業と、今年創立60周年を迎えた西迫会計事務所の自由闊達な意見交換が行われた。


西迫
本日は辻社長自らお越しいただき、ありがとうございます。
早速、質問させていただきたいのですが、「社長」というと、普段どのようなお仕事をされているのか気になります。今回のように、会計ソフトユーザーである会計事務所を訪問することは多いのでしょうか?
こちらこそお招きいただきまして、ありがとうございます。
私たちが最も大切にしているのはユーザーフォーカスなので、会計事務所様にお邪魔して、お話させていただく機会は多いです。まだまだ私たちも実現できていないことが多いので、いただいたご意見はメンバーにシェアして、積極的に開発へ役立てています。
マザーズに上場してからは、IRなどの仕事が増えたので、以前ほど訪問できていないのですが、お客様の声を聞いて開発するというのが、やはり基本であり重要なことだと考えています。
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西迫
会計事務所の立場からしても、お客様である中小企業のニーズは日々感じることが多いです。いただいたご意見を事務所内で共有して、他社の業務改善にも活用できれば、より良い提案につながると思います。
会計事務所様のように客先から信頼されているポジションですと、各取引先のデータを収集することができる。特に西迫会計事務所様は、長年の経験がある分、信頼という目に見えない財産が蓄積されているはずです。集めたデータを活かして、他社の事例を参考にしたり、企業同士のつながりを作ってあげるだけでも、喜ばれるんじゃないかと思います。
西迫
私たちの関与先には社会福祉法人様もおりまして、そうした業態の会計システムの導入についてもご相談いただくことがあります。御社では開発を検討されていますか?
社会福祉法人様だけではなく、各業態の方からご要望をいただいております。開発には、勘定科目を変更するだけのパターンと、ロジック自体を変更する必要があるパターンがありまして、社会福祉法人様に関しては、ロジックの部分から着手する必要があります。対応させていただきたいところですが、優先順位的にどうかというところです。
西迫
その他ご要望として、現金管理をスマホで音声入力できるようにならないかという話もありました。
弊社にはマネーフォワードラボという最新技術を研究している組織があるのですが、そこではすでに音声入力の研究を始めています。技術的には実現可能ですので、あとはニーズとの兼ね合いになるかと思います。
西迫
お客様から新しいシステムに関するご意見をいただく一方で、現場レベルへの落とし込みが難しいケースも多々ございます。御社ではシステムの導入から設定、現場への落とし込みまでを、開発過程ではどのように想定されていますか?
より使いやすいソフトを開発したとしても、なかなか解決できる問題ではないと思うので、サポートする人材が必要になります。しかし、単純に人を派遣するだけでは人件費がかさみ、コスト倒れになる可能性がある。そうした場合に活用したいのが、経済産業省が運用しているIT導入補助金です。以前は、導入したソフト代のみが補助の対象でしたが、現在は、人が動いた工数も対象になりましたので、IT導入補助金はひとつの契機になるのではないでしょうか。
西迫
会計事務所はこれからどのように変わっていくと思いますか?
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2つの方向があると思います。ひとつは、単純作業の自動化を進めて経営相談などサポートにシフトしていく方向。もうひとつは、中小企業の経理業務を請け負う方向。様々な企業で人手不足が発生しているので、需要は伸びてくるでしょうね。
西迫
経営相談の面では、私たちは中小企業の事業承継やM&Aのサポートに注力しています。これからは、事業をどう存続させていくかという点が課題として増えてくると思いますので。
中小企業でも高齢化や人手不足が問題になっていますが、採用の話でいうと御社はどういった人材を求めていますか?選考をする上で基準にしていることがあれば教えてください。
弊社では3つのポイントを挙げています。1つめは「地頭」、2つめが「チームワーク」。個人でも優秀な働きをされる方もいらっしゃいますが、みんなで取り組んでこそ大きなことが成し遂げられると考えているので、チームワークは重要です。3つめは「ミッション・ビジョンへの共鳴」。何のためにやるのか、何のために弊社へ来るのかを大切にしています。
西迫
辻社長ご自身の、仕事に取り組む上でのモチベーションについてお聞きしたいです。まず、起業に至るきっかけは何でしたか?
証券会社に勤めていた時代に、お金で失敗する人をたくさん見てきたんです。その経験で感じたのが、お金は人生において大切なツールのはずなのに、日本ではお金について学ぶ機会が少ないということ。そうした世の中に、お金のコントロールに役立つようなサービスがあればいいなと考えました。グルメアプリなど様々なサービスが世の中に浸透して、人々を幸せにしているのを見て、私もサービスを作りたいと思ったことがきっかけです。
西迫
2012年に6人で設立した御社が、5年間でマザーズ上場、社員数約400名の規模まで成長させるに至った、モチベーションは何でしょうか?
創業当時の話をすると、弊社は高田馬場の小さなマンションからスタートしているんですね。資金調達に苦労していたので、当時の備品などは安いものばかり。ホワイトボードは2回書いたらもう消せないような代物で、だんだん風景画みたいになっていましたね(笑)。あと、トイレの音がだだ漏れで、中で何をしているかわかってしまう(笑)。なんとかここから抜け出そうと必死に頑張りました。また、こうした環境からスタートしているので、サービスを使ってくださるユーザー様の存在はとてもありがたく感じます。
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西迫
やはり、お客様の声の存在は大きいですか?
それが一番大きいですよね。喜んでいただけるとこちらもうれしい。お叱りの言葉をいただくこともありますが、それはそれで期待していただいているということ。弊社サービス「マネーフォワード ME」は約800万人の方にご利用いただいておりますが、それだけの人々の生活に貢献できるのはやりがいもありますし、幸せなことですね。
西迫
「B to B」の面でも、反響はありますか?
たくさんのお声をいただいておりますが、特に印象的だったのが、ご夫婦で居酒屋を営まれている方のエピソード。旦那様が店内でお客様と飲むことがあるそうなのですが、旦那様が酔っぱらってしまうと、奥様1人でレジ締めと会計業務を深夜まですることになってしまう。しかも、翌朝は料理の仕込みがあるので睡眠時間が取れない。そうなると、旦那様に対して憎悪の念が芽生えてしまうそうで(笑)。ところが、POSレジとクラウド会計を導入したことで、日々の会計業務がなくなり、睡眠時間も確保できるようになったので、夫婦円満になれたそうなんです(笑)。冗談の部分もあるかもしれませんが、人々の生活が変わっていくリアルな話を聞けるのはうれしいです。
西迫
とても人間味があっておもしろいエピソードですね。私たちもお客様の声をいただくことが多く、それがモチベーションにつながっていると感じています。
辻社長のパーソナルな部分についてもお聞きしたいのですが、ご多忙の中でもお休みは取られているんですか?
「ワークライフバランス」という言葉がありますが、私の中では2つの境界が曖昧。ワークもライフも同じような感じになっていますが、休息は取れていると思います。
西迫
仕事以外のお時間は、どのように過ごされていますか?
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テニスをやっています。朝6:30から始めて1〜2時間ほど汗を流したら、シャワーを浴びてそのまま会社に行くこともあります。経営者仲間にそうした方が多いので。
あとは、9歳と4歳の娘がいるので、公園で一緒に遊ぶこともありますよ。子どもと遊ぶ時はいつも全力を心がけていますが、先日、迷路に行った時は1時間ほど連れ回されてクタクタになりました(笑)。
西迫
読書がお好きということで、おすすめの書籍などはありますか?
ファーストリテイリング 柳井正社長の「経営者になるためのノート」や、インテル 元CEO アンドリュー・S・グローブ氏の「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」がおすすめです。リアルな悩みを抱えながらも結果を出してきた方々が書かれた本なので。同じ経営者として、課題が自分と重なる部分もありますね。
西迫
最後に、辻社長ご自身が大切にしてきた価値観なども踏まえながら、若い世代へのアドバイスなどはございますか?
自分がやりたいことをなかなか見つけられないという方も多いかと思います。私自身も見つけることができたのは、36歳で起業した時ですので。それまでは起業を目指していたわけではなく、「成長しないと!」という危機感を持って、ただ一生懸命やっていただけ。なので、まずはとにかく実力を付けることを考えて行動していれば、本当にやりたいことが自ずと見つかるかもしれませんね。

マネーフォワード代表取締役社長 CEO
辻 庸介

マネーフォワード代表取締役社長 CEO 辻 庸介

京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー、マネックス証券を経て、2012年にマネーフォワードを設立し、2017年東証マザーズ市場へ上場。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員を歴任。2018年には「第43回経済界大賞 ベンチャー経営者賞」を受賞するなど、受賞歴多数。

株式会社マネーフォワード ホームページ

https://corp.moneyforward.com/

西迫会計 所長
西迫 一郎

西迫会計 所長 西迫 一郎

専修大学大学院経営学研究科(櫻井通晴ゼミ)修了後、上智社会福祉専門学校・社会福祉士・児童指導員科(寺田誠ゼミ)卒業。税理士・社会福祉士、西迫会計事務所所長、MMPG常務理事 会員支援委員会委員長、(一財)総合福祉研究会理事・副会長。会計事務所の2代目として昨年60周年を迎え、IP組織改革を実施。お客さまの事業承継と社会福祉法人の総合的経営支援がテーマ。

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